要件事実まとめノート

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売買契約に基づく目的物引渡請求訴訟
Yは、Xに、平成20年4月1日、本件皿を代金30万円で売った。
1 訴訟物を書け。
売買契約に基づく目的物引渡請求権
2 請求原因を書け。
売買契約(財産権移転約束と代金支払約束)
3 請求の趣旨を書け。
原告は、被告に対し、本件皿を引き渡せ。
4 請求の原因を書け。
1 被告は、原告に対し、平成20年4月1日、本件皿1枚を代金30万円で売った。
2 よって、原告は被告に対し、上記売買契約に基づき、本件皿1枚の引渡を求める。
5 本件売買契約には、契約の際に違約手付としてXからYに10万円が交付されていた。Yは、平成20年5月1日に20万円を提供し、同時に解除の意思表示をしたが、Xが20万円の受け取りを拒否したという事情があった。Yは、どのような抗弁を提出すべきか。また、その抗弁の要件事実は何か。
手付解除の抗弁。
① 主たる契約の締結
② 手付契約の締結
③ 手付金が交付されたこと
④ 売主が解除のためにすることを示して手付金の倍額の現実の交付 または
買主が解除のためにすることを示して手付金返還請求権放棄の意思表示
⑤ 解除の意思表示と到達
6 Xとしては、本件手付は違約手付なので、解約手付ではないという再抗弁をしたいが、どうか。
主張自体失当である。違約手付と解約手付は両立するからである。Xの再抗弁としては、「解除権の留保をしない旨の特別の合意の存在」を主張立証する必要がある。
7 Xは、Yからの手付解除の意思表示の前に、本件皿の購入代金として30万円をYに提供したが、Yは受け取りを拒否したという事情があった。Xはどのような再抗弁を提出できるか。
履行の着手の再抗弁。
履行の着手とは、客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部を行うか履行の提供をするために欠くことのできない前提行為を行うこと。
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ここから後半です。
5 請求の趣旨を書け。
1 原告は、被告に対し、金100万円及びこれに対する平成21年12月1日から平成22年12月31日までの年3パーセントの割合による金員、ならびに平成22年1月1日から支払済みに至るまでの年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決ならびに仮執行宣言を求める。
6 請求の原因を書け。
1 原告は、被告に対し、平成21年12月1日、貸金100万円、弁済期の定め無し、利率年利3パーセントとする金銭消費貸借契約を締結し、同日、原告は被告に100万円を交付した。
2 原告は、被告に対し、平成22年12月1日到達の書面により、同年12月31日までに100万円を弁済するように催告した。
3 同年12月31日は経過した。
4 よって原告は被告に対し、上記貸付金100万円及びこれに対する平成21年12月1日から平成22年12月31日までの、約定の年3パーセントの割合による利息の支払並びに、平成22年1月1日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
7 期限の利益喪失約款により、一括弁済を請求するとき、どのようなことを主張立証しなければならないのか。
「期限の利益喪失約款の合意の事実」と、「特定の弁済期の経過」の2点。被告は、弁済期前に弁済したことを抗弁として提出することができる。
8 利息の天引きが行われた場合、どのようなことを主張立証しなければならないのか。
「元本全額の返還合意」「元本額と一部交付額の差額を一定期間の利息として天引きする旨の合意」「一部金額の交付」の3点である。
9 被告から、どのような抗弁が予想されるか。
①弁済(売買代金請求訴訟を参照) ②相殺
③消滅時効(売買代金請求訴訟を参照)
相殺の抗弁について理解を深めよう
1 相殺の抗弁の要件事実を書け。
①自働債権の発生原因事実
②相殺の意思表示と到達
2 相殺の抗弁の記載例
抗弁―相殺
1 被告は、原告に対し、平成19年3月1日、次の約定で50万円を貸し付けた。
(1)弁済期 平成20年3月1日
(2)利息 年1割
(3)損害金 年1割5分
2 平成20年3月1日は経過した。
3 被告は、原告に対し、平成20年4月7日、1の契約に基づく貸金債権、利息債権及び同年3月2日から同年4月7日までの遅延損害金をもって、原告の本訴請求債権とその対等額において相殺するとの意思表示をした。
3 自働債権が貸金債権である場合、どのようなことを主張立証しなければならないのか。
自働債権の弁済期の到来を主張立証しなければならない。消費貸借のような貸借型契約の場合、弁済期の定めが契約の要素であるから、その到来を主張しなければならない。
4 自働債権が売買代金債権である場合、どのようなことを主張立証しなければならないのか。
履行の提供を主張立証しなければならない。売買契約は双務契約であり、同時履行の抗弁権が付着している。したがって、権利抗弁の存在効果により、相殺の抗弁が主張自体失当となってしまう。
5 自働債権が債権譲渡の譲受債権である場合、どのようなことを主張立証しなければならないのか。
債務者対抗要件具備の事実を主張立証しなければならない。権利抗弁の存在効果により、相殺の抗弁が主張自体失当となる。
6 どのような再抗弁が予想されるか。
①相殺の意思表示に条件又は期限を付した事実
②債務の性質が相殺を許さないこと
③相殺禁止特約
前半です。
貸金返還請求訴訟
平成15年第2回試験に出題
まずは、知識の確認から
その1 消費貸借を理解しよう。
1 要物契約と諾成契約とは何か。また、消費貸借はどちらにあたるか。
消費貸借は要物契約である。諾成契約とは、当事者の合意のみで成立する契約のこと。要物契約とは、当事者の合意に加え、目的物の交付を必要とする契約のこと。消費貸借、使用貸借、寄託が要物契約である。
2 民法の典型契約の型を3つに分類せよ。
①移転型契約(売買、贈与、交換) ②貸借型契約(消費貸借、賃貸借、使用貸借)
③労務型契約(雇用、請負、委任、寄託)
3 貸借型契約の特徴を述べよ。
返還時期の定めが契約の本質的要素となること。契約の成立と同時に目的物の返還請求権が発生するとすれば、契約の目的を果たせないため、目的物の返還請求権を一時的に阻止する必要があるから。したがって、貸金返還請求権の要件事実として、「履行期の定め」「履行期の到来」が必要である。
4 貸金の弁済期を定めなかった場合、いつが弁済期となるか。
返還を催告した時から起算し、相当期間の末日。催告した時をもって弁済期とするという合意があった、という当事者の合理的意思解釈による。このような場合、請求の原因には、「弁済期の定めなし」と明記した上で、「催告をしたこと」「相当期間の末日の到来」を主張立証しなければならない。
6 期限の利益喪失約款とは何か。
分割で債務を弁済するときに、債務者が弁済を怠った場合、その後に弁済期が到来する部分についても一括で弁済するよう請求できるという約定。
その2 利息契約について理解しよう
1 消費貸借は利息なしが原則か、利息ありが原則か。
原則として無償契約であるため、無利息を原則とする。
2 利息を発生させる合意(利息契約)がない場合、無利息となるのか。また、利息契約があっても、利率を合意していない場合は、どのような利率となるか。
利息契約がなければ無利息である。利息契約があれば、利率の合意がなくとも、民法所定の年5パーセントの法定利率による利息を請求できる。
3 利息契約がなくとも、利息請求権が発生する場合はあるか。
商人間の金銭消費貸借契約では、利息を発生させる合意がなくとも、商事法定利息請求権が貸主に当然に発生する。商行為による債務の法定利率は、年6分である。商人の行為は、営業のためにするとの推定が働く。
4 利息の天引きとは何か。
あらかじめ、一定期間分の利息を差し引いて、元本額の一部のみを借主に交付すること。100万円の消費貸借について、1年分の利息10万円を差し引いて90万円のみを交付するような場合をいう。
その3 履行遅滞に基づく損害賠償請求を理解しよう
1 弁済期の「到来」と「経過」は、どう違うのか。
貸金元本の返還請求をする場合や、利息を請求する場合は、「弁済期の到来」を主張立証すれば足りるのに対し、履行遅滞に基づく損害賠償を請求する場合は、「弁済期の経過」を主張しなければならない。弁済期を「経過」することで、はじめて履行遅滞となるからである。
2 貸金返還請求で、履行遅滞に基づき損害賠償を請求する場合、損害の発生やその額を証明する必要はあるか。
金銭債権の場合、損害発生の証明は要しない(民419Ⅱ)。また、法定利率により遅延損害金を請求する場合、額の立証は不要である(民419Ⅰ)。ただし、法定利率を超える利息の利率の合意があればその事実を主張する。また、遅延損害金の利率の合意があればその事実を主張立証する必要がある。
その4 相殺について理解しよう。
1 自働債権、受働債権の弁済期が未到来の場合、相殺はできるか。
自働債権の弁済期が未到来の場合は、相殺の主張ができない。しかし、受動債権の弁済期が未到来でも、相殺の主張ができる。自働債権については、相手方の期限の利益を一方的に奪うことはできないからである。受働債権については、自ら期限の利益を放棄することができる。
消費貸借に基づく貸金返還請求訴訟
1.平成21年12月1日、XはYに弁済期を定めず100万円を年利3パーセントの約定で貸し付けた。
2.平成22年12月1日、XはYに対し、全額を返済するよう催告し、同日Yに到達した。
1 主たる請求、附帯請求の訴訟物を書け。
主たる請求 ―― 消費貸借契約に基づく貸金返還請求権。
附帯請求 ―― 利息契約に基づく利息請求権。
附帯請求 ―― 履行遅滞に基づく損害賠償請求権。
2 消費貸借に基づく貸金返還請求権の要件事実を書け。
①金銭の返還合意 ②弁済期の合意
③金銭の授受(要物契約) ④弁済期の到来
3 利息契約に基づく利息請求権の要件事実を書け。
①元本債権の発生原因事実 ②XY間の利息支払の合意
③②の後一定期間の最終日の到来
このうち、①、③は主たる請求で主張しているので、記載不要。約定利率を請求する場合、「利率の定め」も主張立証する。
4 履行遅滞に基づく損害賠償請求権の要件事実を書け。
①元本債権の発生原因事実 ②弁済期の経過
③損害の発生とその数額
このうち、①は主たる請求で主張しているので、記載不要。また、③も金銭債権なので、記載不要である。約定利率や、約定の遅延損害金利率を請求する場合、その定めも主張立証する。